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絶滅危惧種

吉野家の牛丼

この前久しぶりに吉野屋で牛丼を食べた。

吉野家ではご飯を半分にしてもらうのが常だ。もちろん肥満防止のためである。吉野家では大盛りをはじめ、汁だくやら、軽め(私のようにご飯少なめという意味)など顧客のニーズに細かく対応してくれる。まあ、サービス業だから当然と言えば当然かもしれないが。

で、なにげなくご飯少なめの牛丼を食べていると、しばらくして60代後半くらいの女性が入ってきた。彼女は焼味豚丼を注文したのだが、そのときの要求がなかなかすごかったので驚いた。

彼女いわく、「豚肉は焼く前に少しタレを絡めてください。少しだけですよ。あまり沢山つけるとこげてしまうので。焼き方はあっさりお願いします。あまり強く焼くと豚肉が固くなってしまうので。焼き終わったらもう一度タレを掛けて最後に少し熱を通してください。その後、盛りつけた後でさらにタレを少し掛けて下さいね。」と言ったのだ。正確に記憶するにはあまりにも長いセリフだったので、細部には自信がないが、だいたいこんな感じだった。

彼女の要求は細かすぎると思われたが、店員は嫌な顔ひとつせず、「わかりました」とだけ答えて厨房に入って行った。

う~む、さすがは吉野屋だ。ここまで顧客のニーズに対応するとは。いったいどういう社員教育をしているのだろうか。それともこのような細かいニーズにさえ対応するマニュアルを用意しているのだろうか。私はしばし唖然としてしまった。

それにしても、この女性はちょっとどうかと思う。そこまで細かく指示するくらいなら自分で自宅で作ればいいのに、と思わずツッコミを入れたくなってしまった。しかし、牛丼業界も競争が激しい。やはりサービスに力を入れなくては生き残れないのだろう。

ところで、これと対照的な店を私は知っている。牛丼屋ではなくお菓子屋なのだが、これがまた傑作なのだ。あるとき、商品にカビが生えていると顧客からクレームの電話があった。すると、この店の主人は「食べ物だからカビくらい生える。いちいち電話してくるな。」と対応したのである。

これを聞いてみなさんは気分が悪くなるかもしれない。が、私は面白くて笑ってしまった。私の感覚では、このような頑固者の主人はどこか懐かしい匂いがする。いわば絶滅危惧種である。世間では、とかく顧客サービスの重要性を説くコンサルタントが跋扈しているが、個人的にはこういう頑固者に軍配を上げたくなる。客に迎合しない店があってもいいではないか。むしろ痛快だ。 

そういえば、南フランスを旅行したときもそうだった。カンヌの古びたワイン屋に入ったところ、たった一本のワインを買うのに30分も店の主人のワイン談義につきあわされたのだ。この爺さんいわく、「ワインは女性と同じだ。気安く触ってはならない。まず挨拶しろ。親しくなったら手にとってもいい。」とのこと。私は年代物の上等なワインが欲しかったのだが、「お前はまだ若い。あと10年くらい待ってから飲み頃になるワインを選べ。」といって既に飲み頃になっているワインは売ってくれなかった。

とにかく彼も頑固者だ。だが、こうした頑固者はなぜか憎めない。私自身変わり者だからかもしれないが、ちょっと普通と違う人物に会うと興味が先に来て、多少の欠点は気にならなくなるのだ。

というわけで、何を注文しても「うちには並しかねえんだよ。黙って食いな。」などとのたまう吉野家に出会ってみたいものだ。 

 

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