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きびだんご王国 桃太郎伝説

桃太郎伝説

岡山の桃太郎伝説では、桃太郎が吉備津彦命(きびつひこのみこと)で、鬼が温羅(うら)一族となっています。大和朝廷が中国地方を制圧する際に派遣したのが吉備津彦命で、当時中国地方に大きな勢力を持っていたのが温羅一族だったのです。温羅は一説によると朝鮮半島の百済(くだら)からやってきた渡来人とも伝えられ、当時まだ青銅文明だった日本において、すでに高度な鉄の文明を築いていました。大和朝廷にとっては邪魔な存在であり、戦を仕掛けてこれを滅ぼしたのです。

桃太郎伝説

歴史は勝った側の都合の良いように語られるもので、温羅が鬼ということになったようです。温羅が城を構えていたのが岡山市の北に位置する現在の総社市で、近年その居城であった鬼ノ城(きのじょう)の発掘調査および復元作業が行われています。発掘現場からは鉄を作ったと思われる精錬所跡も見つかっています。

ところで、桃太郎のお供と言えば、犬・猿・雉ですが、吉備津彦命の家来の中に、犬飼部犬飼健命(いぬかいべのいぬかいたけるのみこと)と、猿飼部楽々森彦命(さるかいべのささきもりひこ)、鳥飼部留玉臣(とりかいべのとめたまおみ)の三名がいました。五・一五事件で暗殺された犬養毅首相はこの犬飼部犬飼健命の子孫とされています(犬養はもともと犬飼という姓だったが後に犬養に改姓)。

さて、ここまで読んでみて、鬼ヶ島が出てこないことに疑問をもたれたのではないでしょうか。そうなんです。実は岡山の桃太郎伝説には鬼ヶ島は出てきません。というのも鬼とされている温羅一族は山の上にいたわけですから。

では、鬼ヶ島はどうなったのかと言えば、これは瀬戸内海に存在します。つまり、香川の桃太郎伝説に登場するのです。

香川の桃太郎伝説では、吉備津彦命の弟である稚武彦命(わかたけひこのみこと)が桃太郎ということになっています。そして鬼は瀬戸内海を中心に悪さをしていた海賊です。この海賊を倒すために稚武彦命が鬼ヶ島に出向き、見事悪党を退治したというのが香川の桃太郎伝説です。鬼ヶ島は現在の女木島(めぎじま)と言われています。ちなみに、香川県高松市に「鬼無(きなし)」という地名があるのですが、桃太郎が鬼を退治して鬼がいなくなったことからその名になったと伝えられています。

桃太郎伝説ゆかりの地

鬼ノ城

鯉喰神社

犬養木堂生地

吉備津神社

吉備津彦神社

  1. 鬼ノ城 ・・・ 温羅 (うら) 一族の居城と伝えられる山城跡。近年発掘調査や復元作業などが行われ、歴史愛好家の熱い注目を浴びている。
  2. 鯉喰神社 ・・・ 鯉に姿を変えて川へ逃げ込んだ温羅を吉備津彦命が鵜に化けて捕らえたとされる場所に建てられた神社。
  3. 犬養木堂生地 ・・・ 桃太郎(吉備津彦命)の家来であった犬(犬飼部犬飼健命)の子孫と伝えられる第29代内閣総理大臣犬養毅の生家。
  4. 吉備津神社 ・・・ 比翼入母屋造り(ひよくいりもやづくり)で知られる美しい本殿は国宝。お釜殿の釜の下に温羅の首を収めたとされる。
  5. 吉備津彦神社 ・・・ 吉備津彦命が屋敷を構えていたとされる吉備の中山の麓に建てられた神社。

各ゆかりの地にマウスを乗せると詳細イラストが見られますよ。

桃太郎伝説と陰陽五行説

桃太郎伝説は陰陽五行説が元になっているのではないかと言われています。陰陽五行説では、桃は邪気を払い清める果物です。桃の節句というのがありますが、あれは子供から邪気を払い清めるという行事です。また、陰陽五行説では黄色は力の象徴ですから、桃から生まれた桃太郎が黄色い「きびだんご」(吉備団子、黍団子とも)を持って鬼に立ち向かうという物語は理にかなったものなのです。

桃太郎と桃

桃太郎といえば桃から生まれたわけですが、桃と言えば岡山が誇る特産品です。

もともと気候に恵まれた岡山はフルーツ王国と呼ばれ、桃の他にも葡萄(特にマスカットが有名)などの生産が盛んです。中でも白桃は岡山県で偶然発見された品種で、果皮が薄いピンク色であることからこの名を与えられました。甘みといい果肉の柔らかさといい、極上の桃であり、まさに桃の王様と呼ぶにふさわしい存在です。

一口に白桃といっても現在では改良を加えられた様々な派生品種があり、中でも清水白桃は桃太郎ゆかりの地である吉備の中山に近い清水地方(現在では一宮という地名)の名産品であり、白桃中最高との評価を得ています。

ただし、白桃が発見されたのは明治時代であり、時代考証的には桃太郎伝説とは関係が薄そうです。

白桃

きびだんご(吉備団子、黍団子)

桃太郎伝説にあやかった岡山名物です。桃太郎が鬼退治に出かけるときに持っていったと伝えられます。おそらく、おにぎりとか黍餅(きびもち)の類ではなかったかと考えられます。現在ではお菓子としてお土産になっています。

白桃

桃太郎伝説にもっと詳しくなりたい方は

  • 桃太郎話

    『桃太郎話』

    立石憲利
    (吉備人出版 – 2002年)

  • 桃太郎は今も元気だ

    『桃太郎は今も元気だ』

    おかやま桃太郎研究会
    (吉備人出版 – 2001年)

  • 鬼ノ城と吉備津神社 - 「桃太郎の舞台」を科学する

    『鬼ノ城と吉備津神社 – 「桃太郎の舞台」を科学する』

    岡山理科大学『岡山学』研究会
    (吉備人出版 – 2009年)