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星に願いを

星に願いを

私は子供の頃、星占いをする人たちはみんな天文学者だとばかり思っていた。冥王星がどうのこうのという話をしているわけだから、天文学に精通しているにちがいないと思ったのだ。

で、私も天文学を勉強した。

まず、挑戦したのが惑星の軌道計算だ。惑星の軌道も計算できないような奴が星占いなどできるはずがない、というのがその理由だった。とはいえ、当時中学生だった私にはそれは大きな問題だった。なにか参考書が必要だ。

そこで『天文計算入門 -球面三角から軌道計算まで-』(長谷川一郎著、恒星社、1978)という書籍(絶版)を買ってきた。これは、球面三角法を基礎として惑星の軌道計算を求めるというものだった。全七巻からなる天文ライブラリーの最後の巻で、彗星の軌道計算や日食予報など天文計算法の入門書である。

中学生には難解な本で、しかもまだ習ったことのない様々な公式を駆使した計算のオンパレードだったため、学習は困難を極めた。コンピュータもない時代だ。電卓を叩きながら、ノートを何冊もつぶして毎日計算に明け暮れたものである。

そして、数年に及ぶ軌道計算との格闘の末、私がたどり着いた結論は、

星占いと天文学とは関係がない

というものだった。断言しよう、星占いなどの本を書いている人たちで、軌道計算に精通している者はまずいない。彼らは天文学や宇宙工学など勉強しないで、テキトーに星占いの本を書いているのだ。そんないい加減な占いの本など買うだけ無駄である。そもそも、木星や土星の運行と私の人生に何の関係があるというのだ。まだ一度も行ったことがない惑星に私の命運を握られてたまるか、というのが正直な感想である。

惑星というと、なんとなくロマンを感じるが、これが島占いだったらどうだろう。「アナタの生年月日からすると、アナタの島はヤップ島だ。ヤップ島の来年の運勢は最悪なので、アナタは来年ロクなことがないだろう」などと言われて信じる人がいるのだろうか。恐らくいない。ヤップ島など行ったことも見たこともない島が、自分の命運を握っているなどと一体誰が信じるだろうか。しかも、その占い師自身、一度もヤップ島に行ったことがないとなると、もはや論外だ。だが、ヤップ島を火星に変えた途端、信じる人が出てくるから不思議だ。おかしい。明らかにおかしいではないか。

ところが、どんなにおかしくても、この国では星占いの本が売れるのである。みんな騙されてはいかん。星占いの本を書いている連中は、星の軌道も計算できない連中なのだ。10年後に天王星がどこにあるかわからないのに、10年後の運勢を天王星と関連付けて占うなど論理的にありえないではないか。

もし、海王星のアナタには来年いいことがある、などと言われたら、来年の海王星の位置についてその占い師に質問してもらいたい。海王星の衛星の数や大きさもついでに尋ねてみるといい。これらに答えられないようなら、その占い師はインチキである。やはり、占いの本など、売らないに限るな。

はっきり言おう、未来など占っても意味がないのだ。なぜなら、私の理論では未来など存在しないからだ。3年後の世界は3年という時間が経過しなければ訪れないのである。もし「現在」において既に未来がどこかに存在するのであれば、占い師よりも先に科学者がそれを求める計算式を発見するはずだ。

そういう意味では、天文学者はすでにある程度未来を予測していると言える。だが、彼らの予測は物理法則の上での計算にほかならない。占いに人々が期待しているのは物理法則上の予測ではないはずだ。やはり未来を求める計算式はまだ発見されていないと言えるだろう。

計算式が発見されない以上、未来は白紙のままである。私が占い師なら、白紙の本を出版しよう。それこそまさに正直な占い本ではないか。読者はそこに自分で未来を書いてゆけばいい。

と、ここまで書いて、はっと気づいた。もしかすると占いとは科学に対するアンチテーゼの側面を持っていないだろうか。古来では、天候も占いの対象だった。農業や漁業などに決定的な意味を持つ天候は昔の人々にとって死活問題だったのだ。現代では人工衛星などのデータを駆使した天気予報が取って代わった。かつては不吉な予兆と恐れられた日食や月食も天文学で解明された。地球に接近する流星も常時観測されている。こうして、占いの分野は次から次へと科学に浸食されてきたのだ。

最も人々の関心を集める占いの分野は恐らく恋愛関係だと思うが、これだって、やがて全人類にID番号が与えられ、指紋、声紋、網膜はおろかDNAまで中央コンピュータで一元管理される時代になると、気になるあの人との相性など一発で判明するに違いない。また、自分に向いている職業も、将来かかる疾患も全てDNAレベルで即座に判明してしまうだろう。

こう考えてみると、最後に残る占いの分野とは一体なんだろう。ひょっとしてそんな時代でもまだ占いを信じる人が残っているのだろうか。

ひとつ占ってみるか。

 

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