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君が代

さざれ石

今日は建国記念日ということで朝から街宣車が「君が代」を流している。気持ちはわからないでもないが、朝の珈琲タイムくらい静かにしておいてもらいたいものだ。

さて、何かと物議を醸している「君が代」だが、みんな意味を知っているのだろうか。現代語訳すると「あなたの年齢」となる。

「君が代」が登場する最も古い文献は紀貫之(きのつらゆき)らの撰による『古今和歌集』(十世紀初頭)とされている。その巻の七「賀歌(がのうた)」の部のはじめに、題しらず、詠みびとしらずとして「我君は千世に八千世にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」とある。これが時代とともに変形し、「君が代は千代に八千代に~」となった。

ちなみに、『古今和歌集』の「賀歌」の部には、光孝天皇が僧正遍昭の七十歳を祝って贈った「斯くしつつとにも斯にも長らへて君が八千代に逢ふ由もがな」という歌がある。天皇が僧侶を「君」と呼んでいることから、この「君」という言葉に天皇という意味などないことは明白である。「君」とは誰に使ってもよい二人称なのだ。つまり「君が代」の「君」を天皇としたのは明治政府のでっち上げにすぎない。

では、「君が代」を訳してみよう。

君が代は:  あなたの齢(よわい)は
千代に八千代に:  ずっとずっといつまでも
さざれ石の : 細かい石が
巌となりて: おおきな岩となって
苔のむすまで : 苔が生えるまで(長生きしてくださいね)

つまり、年長者に対する、これからもずっと長生きしてくださいね、という祝い歌である。昔は四十歳、五十歳といった区切りのよい歳に祝いの歌を贈る習慣があり、「君が代」はその年寿を祝う歌だったのだ。

細かい石がくっついて、いつしか大きな岩となり、さらに表面に苔がびっしり生えるまで、ということだが、随分長い年月を要するだろう。ひょっとすると両生類が爬虫類に進化するほどの年月かもしれない。そんなに長生きできるか、とツッコミを入れたくなるほどだが、当時の人の豊かな感性の表れである。

この歌は『古今和歌集』以後も様々な文献に現れる。『新撰和歌集』『和漢朗詠集』などだ。さらに江戸時代になると浄瑠璃(じょうるり)、小唄、長唄などにも取り入れられていく。まあ、おめでたい歌だから人気があったのだろう。

そして、明治維新の後、イギリスの軍楽隊長だったJ.W.フェントンから国歌の必要性を説かれた薩摩藩砲兵隊長の大山弥助(後の元帥陸軍大将大山巌)は、当時薩摩で歌われていた薩摩琵琶歌『蓬萊山(ほうらいさん)』の中から「君が代」を選び、フェントンに作曲を依頼した。が、曲想が洋風でなじめず、宮内省雅楽課に再度依頼。結局、林広守が作曲し直し、F.エッケルトが編曲して現在の形になったと伝えられている。

明治維新の原動力であった薩摩の人々が明治政府の中枢を占めていたために、薩摩の歌が国歌になったのであろう。もし、備前岡山の侍たちが明治維新を主導していれば、「わたしゃ備前の岡山育ち、米のなる木をまだ知らぬ~」という歌が国歌になっていたかもしれない。

ところで、「君が代」はいかにもアジアンテイストでなかなか面白いが、一カ所だけ致命的な所がある。それは「さざれ石の」という箇所だ。「さざれ石」で一つの単語なのに、この曲では「さざれ」と「石」の間にフレーズの区切りが入ってしまっている。だから、「さざれ」と「石」の間で息継ぎをして歌う人が後を絶たない。しかし、言葉の意味を考えると、「さざれ」と「石」の間で息継ぎは厳禁である。「さざれ石」と一息で歌わなくてはならない。が、この箇所に変なフレーズの切れ目があるために歌いづらいことこの上ないのだ。できれば作曲し直すか、歌詞を変更したいところだが、いまさらどうにもならないだろう。

それはともかく、「君が代」の「君」を天皇とした明治政府によって「君が代」は天皇を中心とする帝国主義国家の運営に利用された。第二次世界大戦後、今度は「君」とは国民を指すと定義が改められたそうだが、もともと誰を指してもよい言葉なので、あれこれ議論すること自体不毛だ。

にもかかわらず、毎年何かと物議を醸し続けている。裁判沙汰になっている事例も少なくない。恐らく、「君が代」が単なる年寿の祝い歌だという認識が広まっていないからではないだろうか。ちゃんと認識されていれば、そもそも争点などないのだから問題など起こりそうもないではないか。もっとも、帝国主義に利用された曲という事実が許せないという人々がいることはいかんともしがたいが…

とにかく、小学校で英語なんか教える時間があれば、もっと歴史を教えた方がよいと思うのは私だけだろうか。
(写真は京都・下鴨神社のさざれ石)

 

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