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ホタルの住む脳でいたい

ホタルの光

先日、岡山の市街地を流れる西川という小さな川にホタルを定着させようという運動を展開したことがある人物に出会った。西川というのは、岡山県三大河川の一つである旭川の合同堰から水を取り入れた、もともと農業用の用水である。岡山の中心街を流れている。

で、成果はどうだったのかと尋ねると、うまくいかなかったそうである。この人物の話では、なんでも川が街の中心部にあり、夜もネオンの明かりなどで照らされ続けるため、ホタルの棲息に適さなかったとのことである。

ネオンがどの程度障害になるかは私にはよくわからないが、確かに市内中心部にホタルというのは無理がありそうだ。そもそも西川は護岸工事がされている区間が大半を占める。ここでいうホタルとはゲンジボタルかヘイケボタルのことだろうから、幼虫は川の中でカワニナを食べて育つが、蛹になるのは川岸の土の中なので、護岸工事はこれらのホタルにとって致命的である。まさか、こうしたホタルの生態を知らずに西川に放流したのだろうか。だとしたら無謀と言わざるを得ない。

ところで、幼虫は川の中で、と書いたが、これは驚くべきことである。というのも、世界中でホタルは2000種ほどいるらしいが、その中で幼虫が水中で過ごすのはほんのわずかだ。たまたまその内の数種類が日本に集中しているのだ。つまり、ゲンジボタルとヘイケボタルなどであり、これらは特殊なケースなのだ。

ちなみに、ヒメボタルというどちらかというとマイナーなホタルがいて、こちらの幼虫は陸生で、カタツムリなどを食べている。が、実はこれこそがホタルの国際標準なのだ。ホタルの幼虫は陸上、これが常識であり、ゲンジボタルやヘイケボタルのように幼虫が水中というのは非常識なのである。ここでも竹村健一が言うように、日本の常識は世界の非常識という構図が確かめられた。

それはともかく、ホタルの放つ光は美しい。日本の初夏に欠かせない風物詩である。しかし、実は幼虫も光るということをご存知だろうか。そうなのだ。幼虫も光るのである。だから、その気になれば冬だってホタルの光が楽しめるのだが、なぜか冬の風物詩にはならない。ちなみに蛹も流行に遅れまいと発光する。ただし土中なのでなんの効果があるのかよくわからない。また、成虫になっても発光しない種類もある。

で、話を元に戻すが、先の人物はホタルが戻ってくるほどきれいな川を再生したいという運動をしていたわけだ。護岸工事をした川はもはや川ではなく単なる水路だというのが私の見解だが、それでも汚い水が流れるよりはきれいな水が流れた方がいいに決まっている。実際、旭川と西川の水質は、私が子供の頃よりも良くなっているようだ。ただし、それよりもっと前、私の父が子供だった頃には遠く及ばない。父は子供の頃、西川でよく泳いで遊んだと言っていた。私は誰かが泳いでいるのを見たことがない。今は泳ぐことなどありえない有様だ。

都市化とは脳化だと養老孟司は言う。つまり、都市とはヒトの脳の中で考えたことが具現化された姿に他ならないという考え方だ。だとすると、我々の脳の中からホタルのような懐かしい仲間が消えつつあるということを意味していないだろうか。果たして私の脳の中はどうだろう。幸い、近代的な大都会にはほど遠い、かなり時代遅れの風景が残っているようだ。

だからだろう、よく古いと言われる。

 

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